「アート鑑賞、超入門」藤田 令伊 著 (集英社新書)
我々は芸術作品をどのように鑑賞するべきかという本です。
まずはこの絵を見てね。
後でこの絵について質問するから、じっくりと見るのですぞ。
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はい、どうもありがとうございました。
ぜんぜんじっくり見ないで、軽く流して見たことくらい、僕にはお見通しですぞ!
これはヨハネス・フェルメールの【牛乳を注ぐ女】って絵です。
で、質問なんですが、この絵で窓のガラスは割れていたでしょうか?割れてなかったでしょうか?
作者によると、この質問に正確に答えれれる人は、1%くらいらしい。
正解は絵を見直せば分かるけど、奥の上から2番目のガラスが割れて光がさしてます。
これは光を表現したかったのか、当時の家庭ではガラスが割れている家が一般的だったのか?
ここに気がつくだけで、絵の見方も変わってくるわけね。
筆者によると、美術館でも人々は1分弱くらいしか一枚の絵を見てないらしい。
カップ麺ができる以下の時間。
もっとじっくりと見ましょう。それが基本中の基本です。
さらに見るのは自分なのです。
専門家の意見に必ずしも従う必要はないと言います。
よく作品の名前で【無題】とか【作品No3】とかあるけど、これは作者が受け手に変な先入観を与えないためだということです。
芸術の表現が自由なら、見方だって自由なのです。
書物だって、その半分は読者が作るという言葉があります。
あーそっか、じゃあ専門的な知識は必要ないんだ。
と言うと、そうでもない。
では次の絵。
これ見てどう思いますかね?
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これはフランシスコ・デ・ゴヤって人の【ボルドーのミルク売り娘】って絵です・
これはゴヤの絶筆の作品です。
ゴヤは権謀術数のすえに宮廷画家の地位を手に入れますが、けっして幸せな生活ではなかった。
フランスがスペインに侵略する地獄絵図を目の当たりにもする。
そして病気して耳が聞こえなくなり、人間のむごたらしい本性を描く【黒い絵】と呼ばれる14枚のシリーズなどを描きます。
悲しい人生ですが、晩年はボルドーに亡命して、そして死を迎える近くになって毎日ミルクを届けに来る娘さんを描いたのです。
それが上の絵です。
黒い絵とは言えない優しい絵ではないでしょうか?
こういった知識があると、同じ絵でもまた違って見えてくるではないですか。
芸術作品を見るには自由な見方と、知識に裏打ちされた見方と両方必要です。
でも専門家やマスコミの意見を鵜呑みにしてはいけません。
知識はあくまでも知識。
その知識を踏まえたうえで、自由に鑑賞しましょう。
超有名なモナ・リザだって批判したっていいんです。
まあそんな本でした。
美術鑑賞が好きな人は、読んでおいて損のない本だと思います。